デジタル国家欧州エストニア、公的書類の電子化技術


北欧バルト諸国の1つである「エストニア共和国」という国をご存知だろうか。
人口はわずか約 131万人、国土面積4.5万平方キロメートル (日本の約9分の1)の小国だが、近年ブロックチェーンを活用したデジタル先進国として世界中から大きな注目を集めている非常に興味深い国の一つである。
今回は、エストニア政府で実際に活用されている事例をご紹介し、ブロックチェーン導入前後においての業務・コスト面での効率性向上について言及していく。

概要

エストニアは、国民の個人ID(日本で言うマイナンバー制度)を活用し、住民情報やカルテ、処方箋などの健康情報の管理、納税、政治投票など、さまざまな行政サービスを電子化しブロックチェーン上で管理している。
国民にとって利便性が高く、低コストな電子政府を実現している。

バックグラウンド

そもそもエストニアという国は、1991年に旧ソ連から独立するまでの約50年間にわたり長くロシアの支配下にあった。
常に「国家がいつなくなってもおかしくない」という脅威にさらされていた。
そのため、国の根幹をなす国民の情報を電子的に持つことにより、たとえ国土がなくなったとしてもサイバー上で国家を維持することを可能とすべく、「電子国家」という発想を持つに至ったともいわれている。

ブロックチェーンの導入

導入目的

国土面積と比べて人口が少ないエストニアにおいて、公共サービスを国民に広く行き渡らせるためにITの活用は必須だったのに加えて、国としての財政基盤を強化させるために必要なことは人口増加と企業誘致である。
これによって、テクノロジー大国としてのエストニアを世界へPRし、国の経済成長をはかる目的があったのだ。

導入内容

まず、政府が導入したのが各省庁のデータベースを連携させる「X-Road」と呼ばれる仕組みである。
これは、各省庁が別個に持つ住民登録情報やヘルスケアの情報などのデータベース同士を、それぞれPeer-to-Peerでつなげ、情報の相互参照を可能とするデータ交換基盤を指す。
そして政府はこのシステムと民間企業(ガードタイム社)の技術を融合させたのだ。
同社のブロックチェーン技術であるKSI (Keyless Signature Infrastructure)はログの整合性を常時監視しセキュリティー面を担保する役割を担う。
KSIは複数の機関で大量発生するデータの改ざんを検知する、ガードタイム社独自の技術だ。
外部のデータベースに格納されている データが、いつ、どこで発生したかの情報をチェーンにする仕組みであり、万が一情報改ざんが行なわれた場合でも、過去のどの時点、どのデータ発生箇所で改ざんされたかを1秒間隔で検出することができる。
改ざん検知に特化しているからこそ、リアルタイムな検知が可能といえよう。

導入結果または期待されること

安全で強固な上記技術の導入により、多くのシーンでエストニア政府は恩恵を享受することとなる。
・電子署名の導入により1人当たり年間1週間分の労働時間削減(GDP2%に相当)
・国会の閣議時間が5時間から30分に短縮
・法人登記の完了まで最短18分
・税金の電子納付率98%
・確定申告完了まで最短わずか3分
・患者電子情報の連携により病院の待ち時間1/3に短縮、および処方箋の99%が電子化
・電子投票制度の導入でコストが40%削減

このエストニアの好事例はブロックチェーンの必要性を訴える世界への猛烈なアピールとなる。
現実に世界中がエストニアを参考として政府主導でブロックチェーン事業を推進している。
今後の各国政府の動向にも注目したいところだ。

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