三井住友銀行がブロックチェーン技術を用いた貿易プラットフォーム「Contour」(コンツアー)と「Komgo」(コムゴ)に参加する方針を明白にした。7月21日、同行がContourのパイロットプログラムに参入するための覚書の締結と、Komgoメンバーシップ契約の締結を公表した。
同行は、分散台帳技術(DLT)のコルダ(Corda)を開発した米R3と、TradeIXが先導する貿易金融効率化プロジェクト「マルコ・ポーロ」にも参入し、2019年に実証実験を終わらせた。同行は、7月21日のリリースで「実証実験は既に終了しており、『Marco Polo』と共に、新しく『Contour』『Komgo』へ参加することで業界 の貿易実務デジタル化を促進させ、顧客に付加価値の高いサービスを提供する」と述べた。
シンガポール・Contour、スイス・ Komgo
Contourは、シンガポールに本社を置くContour社が中心となって開発している、R3のCorda上に築くブロックチェーンベースの貿易金融プラットフォームである。2018年にプロジェクトが公表され、もとの名称はVoltronであった。BNPパリバ・HSBC・ING・スタンダードチャータード銀行・DBS銀行などが参入している。
50以上の銀行と企業が実証実験に参加し、今年になってパイロットプログラム(βネットワーク)が機能しており、三井住友銀行は邦銀として初めてのβネットワークに参加することになった。
一方、「Komgo」はスイスのKmogo SA社が開発し、コモディティ業界に特化したプラットフォームで、大手金融機関・石油メジャー・コモディティトレーダーなど計18社が株主として関与している。
2018年8月、KomGo SA社は設立し、三菱UFJ銀行も株主として参加した。2020年1月、三菱UFJ銀行はKomgoを用いて信用状(L/C=Letter of Credit)を発行した。信用状とは、銀行が実証した支払い保証である。売り手が支払う金額を受け取れる譲渡可能な証拠となるが、本来は処理・決済に長い日数を要していた。
貿易金融でも発展するプロセスのデジタル化
どのプラットフォームも、信用状の発行・通知・資金化などの一連のプロセスをデジタル化しており、貿易実務の効率化を目標としている。三井住友銀行は、「新型コロナウィルス感染症により、日本を含む各国が外出自粛やリモートワークの対応を強いられる中、海外との煩わしい書類のやり取りを必要とする貿易取引には様々な混乱が生じ、貿易実務のデジタル化への期待が高まっている」と指摘した。
貿易取引では、売り主と買い主の間に銀行・保険・輸出入監督官庁・税関等の多数の関係者が関与する。一つの取引で信用状や保険証券を含む70〜100種類の書類が必要となり、プロセスも煩雑、取引に要する時間も長い。そこでブロックチェーン技術をベースとするプラットフォームを用い、プロセスをデジタル化する動きが進んでいる。