分散型台帳技術(DLT)、つまりはブロックチェーンを使用したデジタル債券は、市場参加者に利益をもたらすのか?
これは新たなトライアルとしてHSBCシンガポールが試していることである。シンガポール証券取引所(SGX)と投資会社テマセック(Temasek)が協力してトライアルの開発を行なっている。
同取り組みは、投資家に固定金利を支払う確定利付き証券、債券類の発行・償還を効率化するDLTの可能性を検討するものであり、特にアジアの債券市場に注目している。
現地時間の2019年11月13日、HSBCは「アジアの債券市場が急成長しているときに、データの共有を異なる組織間で行うことでライフサイクル全体で債券を追跡する単一のプラットフォームがないため、その発行と償還は効率性に欠けている」と発表した。
トライアルの目的は、このようなプロセスの効率化やマーケットの摩擦を緩和することであり、プライベートチェーン上のスマートコントラクトを使用し、債券をトークン化することによって、問題対処を図っている。HSBCは、最終的にDLTは発行者・投資家・債券アレンジャー・カストディアンのコストを削減できると語った。
以前からHSBCは、ブロックチェーンとDLTと深い関係を構築しており、これらの技術を使った数多くのプロジェクトをローンチし、何度かブロックチェーンとDLTを後押しするような発言をしている。
2018年、同行はグローバルなブロックチェーンベースの取引を「(孤立化した)デジタルの島」は妨げる危険性があると忠告した。また、幹部の1人は米商品先物取引委員会(CFTC)に対し、より多くの「ポジティブなノイズ」を作ることで、同技術の使用をDLTに消極的な企業に促すことができることを指示した。
非常に強気に感じられるテクノロジーに関して、HSBCシンガポールのトニー・クリップスCEOは「債券市場の非効率性を減少させるDLTの可能性は未だ分からない」と語った。
また、同氏は「我々はその実際の実行可能性を、マーケット参加者とコラボレーションすることで十分に理解できる」と述べた。
シンガポール証券取引所の債券・通貨・コモディティの責任者リー・ベン・ホン氏は「我々はスマートコントラクトとDLTが債券発行のエコシステムにおける長年の課題を解決できるか否かを、HSBCとテマセックの参入により総合的に評価できる」と語った。
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