現実とのひも付け問題:サプライチェーンで問われる


まとめ
「ブロックチェーン×物流分野」は比較的相性の合う組み合わせである見方が強まっている。しかし、物流(トレーサビリティ)の透明化はブロックチェーンだけでは不完全であることも指摘される。トレーサビリティ透明化のさらなる進化、改善にはIoTやAIとの組み合わせが必須になる。

事業へのブロックチェーン代表使用例として、その透明性を生かしたサプライチェーンでモノの追跡と実証に活用する働きは、世界中の物流業界を中心に、活発に行われている。

「物理的なモノとブロックチェーン上のデータをどのように繋ぎ合わせるのか。モノがすり替えられると無意味になるのではないか」という評価も多く、頻繁に生じる課題である。

昨今、話題となっているサプライチェーンとして、IBMが実行するホタテ貝の流通システムの例に「現実とのひも付け問題」を考慮する。このシステムと絡みがあるのは、中間を除いてシンプルに考えると、ホタテ漁師とホタテ購入者であるレストランの2者であり、レストランでホタテ料理を注文する消費者が、各自でホタテの産地や流通経路を確認することができるという仕組みである。

「現実とのひも付け問題」で思慮されるのは、実際のホタテとネットワーク上で示されるホタテに相違がある可能性だ。

例を挙げると、高級なホタテを購入したレストランが悪意を持っていた場合、このレストランは高級なホタテを市販の安いホタテにすり替えることができる。そして、高級なホタテの証明を手にしているために「高級なホタテの証明」を市販のホタテに添えて消費者に提供することも可能である。さらに、この事実をネットワーク上から推測する方法はない。

上記のように、悪意を持つ人がシステムの中に存在すると、信頼度の高いサプライチェーンを築き上げることができない。前提として参加者全員が相互に信用することが必要不可欠である。ブロックチェーン上で完結する暗号資産のシステムとは異なり、現実と関連性のあるサプライチェーンの場合、ブロックチェーンのみでは完全にトラストレスな仕組みの構築は難しい。

即ち「現時点では解決策がない」のが現状だ。しかし、後のIoT技術の進展により解決の可能性がある。IoTつまり「モノのインターネット」は、その名の通り、現実とインターネットを結びつける技術である。現実でのモノのすり替え防止、もしくはネットワーク上からの見張りが可能になれば、ブロックチェーンを使用してサプライチェーンをトラストレスなものに展開させることができる。

エンタープライズ領域では、今回話題となったサプライチェーンを含め「ブロックチェーンだけ」でイノベーションが生じる分野は滅多にない。重要なのは、ブロックチェーンと既存技術を組み合わせることや、IoTやAIのような先進技術を組み合わせることも含めて、検討していくことである。

IBMのホタテ貝流通システムに関する記事はこちら

IBM:ブロックチェーンに基づくサプライチェーンをホタテ貝用に築く

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