9月19日、伊藤忠商事は、コーヒーの生産・流通・販売でトレーサビリティを実現するプロジェクト「ファーマーコネクト」への参画を明らかにした。スイスのFarmer Connect社が開発したプラットフォームは、IBMの食品追跡システム「フードトラスト」を基盤として設計され、コーヒー豆のサプライチェーンの透明化と効率化を目指している。さらには、小規模なコーヒー農家向けに金融取引の機能を提供することも予定されている。
ファーマーコネクトはIBMと協力し、「Thank my Farmer」というアプリケーションを開発した。同アプリは、エンドユーザー向けのインターフェースとして機能している。消費者は、コーヒー豆の袋に印字されたQRコードを読み取ることで、いま手元にあるコーヒーが、どのようにどこで作られ、どのような経路で手元に届いたのかを知ることができる。2020年に消費者を含めた一般公開を予定している。
フードトラストは、IBMとアメリカのWalmartとの取り組みから始まった食品トレーサビリティのシステムで、ブロックチェーン技術のHyperledger Fabricを基礎として開発された。コーヒーは南アメリカやアフリカ、東南アジアなど赤道直下の発展途上国を中心に栽培されている。しかしその多くはコーヒー農家は銀行口座を持っていないのが現状問題となっている。ファーマーコネクトでは、StreetCred社が開発する分散型IDとの連携も実現し、コーヒー農家向けの金融取引の機能も提供する。従って、消費者は特定の農家を直接支援することも可能になる。
ファーマーコネクトに参画するコーヒー豆のサプライヤーは、伊藤忠、コロンビアコーヒー生産者連合、アメリカのJMスマッカー、オランダのジェイコブズ・ダウ・エグバーツ、カナダのRGCコーヒー、ベルギーのベイヤーコーヒー、スイスのスカフィナの7社。アジアで同プロジェクトに参画するのは、伊藤忠のみだという。これらの企業が提供するコーヒー豆において、豆の栽培からブレンドの詳細、海を渡り一杯のコーヒーとして消費者に届くまでの過程を確認できるようになる。
ファーマーコネクトは、ルワンダとコロンビアで生産したコーヒーと生産から配達まで追跡するテストを数か月にわたり実施した。輸出したコーヒーについて、袋単位でその所在を記録することが可能になったという。今後2020年の商用化に先駆け、JMスマッカーとJDEが一部のユーザーに限定したテストを実施する予定となっている。商用化後は、コーヒー豆だけでなく、茶葉やカカオなどの農作物にもプラットフォームを拡大する。
ファーマーコネクトによると、ここ10年でコーヒー豆は一定の需要を示しているが、大規模生産が中心となりその市場価格は低下している。その影響で、小規模なコーヒー農家はほかの作物への転向など、コーヒー豆の生産から撤退せざるをえない状況がある。同社の取り組みは、コーヒー農家の現状を鑑み、新たな付加価値を生み出すという目的も組み込まれている。プロジェクトに参画する伊藤忠は、総合商社として各種原料の継続的な供給にも着目している。3月には、天然ゴムの持続的な取引のために資金を拠出することを発表した。
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