2019年ブロックチェーン業界の動向:リブラが大きく関係


まとめ
暗号資産を支える技術であるブロックチェーン(分散型台帳)。データの改ざんがほぼ不可能とも言われる安全性から近年は用途が広がっている。数々のスタートアップがブロックチェーン分野で名乗りを挙げ、ベンチャーキャピタルを中心に巨額の資金が動き始めた。その実態をCBインサイツのデータをもとにまとめた。

2019年に入り暗号資産の存在が明確化され、ブロックチェーン分野は再度勢いを取り戻し始めている。

VC投資とエクイティファイナンスのトレンド

VCの投資対応は時とともに移っており、以前はビットコインを通貨として手がけている企業を支援、その後はプライベートブロックチェーン企業を投資した。現在ではトークンを通貨としてだけではなく、「トークンエコノミー」と言われる様々な機能や価値に紐付けた形の流出させる方法に着目している。

SECによるカナダの対話アプリ「キック(Kik)」に対する起訴や、「ビットライセンス」による米ニューヨーク州の暗号資産関連企業の認可制度による規制、暗号資産の値動きの荒さなどがブロックチェーン分野の課題として上がれられる。

2019年4月から6月末までの時点では、19年通年のVC投資件数は454件、投資額は16億ドルと前年の41億ドルから大幅に減少する見通しだ。2017年はブロックチェーン関連企業が今よりも少なく、未公開企業への投資をけん引する「バブルマニア」もおそらく少なかったため、2019年はCV投資額は2017年を上回る可能性が高い。

地域別では、エクイティファイナンスの4割が米国に集中し、中国(15%)、英国(8%)、シンガポール(4%)、韓国(3%)が続いている。中国の世界有数の資金調達額を誇るブロックチェーン企業をはじめとし、アジアではスタートアップが続々と誕生している。

ブロックチェーン分野で活発な投資家は、この分野で期待できるスタートアップを支援するものが多く、上位にはデジタル・カレンシー・グループや米パンテラ、ポリチェーンといった仮想通貨専用ファンド、ブーストVCなど最先端技術のアクセラレーター(起業支援機関)、米アンドリーセン・ホロウィッツなどブロックチェーン専用ファンドを持つVCが名を連ねている。

首位のデジタル・カレンシー・グループはブロックチェーン分野への投資の草分けだ。シリーズBの資金調達ラウンドで6500万ドルを調達した米フィギュア・テクノロジーズ(Figure Technologies)、分散型台帳技術を使ってライブ動画を配信する米ライブピア(Livepeer)、分散型金融(DeFi)サービスを手掛ける米ステークド(Staked)、仮想通貨取引会社のコインフレックス(CoinFLEX)の4社に2019年に入ってから出資している。

2位のブーストVCは最近投資した分散型DNSサービスプロバイダーの米アンストッパブル・ドメインズ(Unstoppable Domains)、分散型予測市場を運営するスペインのゲッサー(Guesser)、仮想通貨に連動した上場投資商品(ETP)を手掛けるスイスのAmunなどをはじめとしこの5年間で50社近くのブロックチェーン企業に投資している。

3位にブロックチェーンVCの草分けであるブロックチェーン・キャピタルで、この5年間で、ポリチェーンなどよりも多くのブロックチェーン企業に投資している。

今後の見通し

2019年のブロックチェーン業界の今後の見通しは多少不透明なところもあるが、慎重な柄も楽観的な見方がある。ICOの時代も終わり、VCの投資熱もさめ、暗号資産の時価総額もビーク時に比べると減少した。

しかし、ここ数ヶ月ビットコインやイーサリアムなどの主要コインは投機の対象となり、取引高が急増している。大企業はフェイスブックや米大手銀JPモルガン・チェース、米決済大手ビザといった優良企業による最近の動きを受け、ブロックチェーン業界への関心を高めている。

このような盛り上げりの理由としてフェイスブックが発行した「リブラ」の影響が強い。リブラは新たなビットコインというよりも世界各地の銀行口座を持たない層に対する安定通貨へのアクセス提供を目指しており、「ベンモ(Venmo)」のような米小口送金サービスだ。

このプロジェクトには決済や配車サービス、EC業界の各社から、VC、ブロックチェーンのスタートアップに至るまでそうそうたる面々が参加しており、決済業界ではビザと米マスターカードの双方を筆頭に大手各社と参加契約を結び、米ユニオン・スクエア・ベンチャーズ(USV)やアンドリーセン・ホロウィッツなどブロックチェーン分野のスマートマネーVCの支持も得た。通信大手の仏イリアッドや英ボーダフォンも関与する。

ビットコイン専門の香港の取引会社のザポ(Xapo)から支持を取り付けたほか、資金の豊富な仮想通貨関連スタートアップであるコインベース、米アンカレッジ(Anchorage)、米バイソン・トレイルズ(Bison Trails)といったもプロジェクトに署名した。

さらに、米決済大手のストライプやペイパル、米配車サービス大手のリフトやウーバーテクノロジーズ、音楽配信大手スポティファイ(スウェーデン)などの著名テクノロジー企業も名を連ねている。このプロジェクトには既に多少の法的問題があり、トランプ米大統領による否定的なツイートなどをはじめ規制当局から厳しい視線を向けられている。しかし、大企業が関心を示していることはブロックチェーン分野にとって強力な盾となる。

ギャラクシー・キャピタルを創業したマイク・ノボグラッツ氏は、「(投資家は)フェイスブックのおかげでワクワクした。ウーバーやマスターカード、ビザが『暗号資産の世界に参加したい』と言っていることに興奮した」とフェイスブックのこの構想は最近のビットコインの上昇のきっかけになったと語る。また、このプロジェクト自体が「暗号資産という概念を完全に正当化した」とも語った。

上記を踏まえるとブロックチェーンには再び追い風が吹いており、この分野のスタートアップにとっても朗報といえる。この分野は専門性が高いため、各社は大企業や公的機関がこの分野に参入するのを支援できる立場にあるからだ。ブロックチェーンの概念が誕生してから10年しかたっていないため、大企業が「自前で開発するか、他社を買収するか」を判断する際には、M&A(合併・買収)に傾く可能性が高いだろう。今年はVC投資の顕著な回復にこの新たな楽観的観測が果たしてつながるかどうかが注目点だ。

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