電話番号転出のNPにブロックチェーン活用 / ウィプロ (インド)


まとめ
インドのIT大手ウィプロ(Hyperledgerプロジェクト加盟)は、同社が取り組むモバイルナンバーポータビリティ(MNP)へのブロックチェーン活用について報告を行なった。これまで課題となっていた「個人情報の安全性向上」「不通時間の短縮」「プリペイド残高の繰り越し」などのプロセスの簡素化を目指す。

 

8月26日に、インドのIT大手であるウィプロは、Hyperledgerの公式ブログで、同社が取り組むナンバーポータビリティ(NP)へのブロックチェーン活用を明らかにした。

NP(携帯電話の場合MNPと略される)は、通信事業者を変更してもユーザーが同じ電話番号を利用できる仕組みである。ブロックチェーンにより、通信事業者間で顧客情報のやり取りをする際のリスクを下げ、より安全かつ迅速に電話番号の移行をすることが可能だ。

国内でMNPをすると、数時間ほど電話番号を利用できない。この間に、通信事業者はユーザーの登録情報の移行に関わる事務手続きや、移行先での接続性のテストなどを行っている。海外でも同様だが、国内のMNP事情ほど整備されていない。

ウィプロはHyperledger Fabricを活用し、NPプラットフォーム上での金銭的価値の移転と、こうした事務処理の効率化を目指す。

現状のNPの仕組みには、複数の課題があると同社は主張する。例えばプリペイド型の契約時に電話番号の転出を行うと、電話番号にひも付いたプリペイド残高が失われる。これはNPの仕組みが金融取引や価値の交換の機能を持っていないためである。また、通信事業者間での顧客データのやり取りを仲介業者を経由して行うなど、プロセスの複雑化による問題も挙げられる。

NPに関する規制当局も事業者のプロセスの複雑化によって余計なコストが生じ、監査に支障が出ている。規制当局は、転出手続きの遅れによるユーザーからのクレーム・罰則対応・事業者による規制違反への対応を行っている。

こうした課題を解決するために、Hyperledger Fabricが持つデータ共有範囲の限定機能や高いスケーラビリティが、プラットフォームとしての条件を満たしていた。プロセスの複雑化がなくなれば、通信事業者は事務手続きをより短い時間で処理でき、監査のコスト削減や精度向上につながる。

ウィプロが開発するプラットフォームは、以下の5点を改善策として挙げた。信頼関係がない当事者同士が、仲介者なしで情報と価値の交換を安全に成立させ、NPのプロセスをより簡素化することを目指す。

①移行プロセスの簡素化
仲介業者を介さずに、事業者同士で顧客データのやり取りを実現する

②顧客データの安全な交換
ブロックチェーン特有の耐改ざん性により、交換する顧客データの安全性を保障する

③ブロックチェーンによる金融取引の実現
プリペイド契約者の残高を事業者間で移転できるようにする

④運用コストとルーティングコストの削減
電話番号の転出に用いる仮番号(ルーティング番号)をブロックチェーン上で管理することにより、ルーティング関連のコストを削減する

⑤当事者間に限定した完全な透明性の実現
通信事業者、規制当局、ユーザーが手続きプロセスの進捗をリアルタイムに確認できる

ウィプロがプラットフォームに活用するHyperledger Fabricは、Linux財団が主導してオープンソースで開発しているブロックチェーン(分散型台帳)技術プラットフォームにおける派生プロジェクトの1つであり、3大コンソーシアム向けブロックチェーン技術の1つにも数えられる。8月27日にマイナーアップデートとしてバージョン1.4.3を公開した。

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