野村HD,野村総研がブロックチェーンで社債取引システムの実用化へ


まとめ
野村ホールディングスと野村総合研究所(NRI)は有価証券の取引をブロックチェーン(分散型台帳)で管理する仕組みを共同で開発する。ブロックチェーンの活用で事務負担やコストを軽減し、より少額での起債を企業に促す。まず企業が発行する社債を対象とし、2020年夏の実用化を目指す。

野村総合研究所(NRI)と野村ホールディングスは有価証券の取引をブロックチェーン(分散型台帳)で管理する仕組みを共同開発する。まず、2020年夏までに、企業が発行する社債を対象とし実用化を目指す。ブロックチェーンの活用でより少額での起債をすることで、事務負担やコストを軽減し企業に促すのだ。小口での売買もしやすくなることから、社債市場の活性化につながる可能性が見込まれている。

NRIと野村ホールディングスは8月にも新会社を設立し、ブロックチェーンを使った取引基盤を整える予定である。新会社にはNRIが34%、野村が66%出資する方針となっている。利率や発行額といった社債の発行条件や、投資家の取引履歴を、ブロックチェーンの技術を使い、その時点での価格などを低コストで確実に記録できるようになることが期待されている。

証券取引所に上場する株式とは違い、社債は同じ企業が複数本発行する。現在、発行されている社債は約3,000本、残高は約60兆円にも上っている。発行や売買のたびに必要な権利の移転手続きは証券会社が人手で対応しており、事務作業は膨大となっている。

しかしながら、社債を引き受ける証券会社が企業から受け取る手数料は低下している。格付けや発行の頻度にもよるが、発行額の0.1~0.5%程度がこの手数料だ。このため少額の起債では採算が取れず、最低でも数十億~100億円規模でなければ発行しにくいのが実情である。

ブロックチェーンに管理を移行することで、こうした負担がなくなるため、理屈上は1円からでも発行できるようになる。企業は投資家の需要や相場環境をみながら、より機動的に社債を発行することができるようになる。新システムを使って社債を発行するのは現在と同様で、大企業が中心とみられる。証券会社は継続的に引受時の審査機能を果たす予定だ。

投資家と証券会社による相対取引が社債発行後の流通市場では中心となっている。ブロックチェーンの活用で売買が盛り上がり、価格の透明性が高まる可能性も見込まれている。野村は17年末からブロックチェーンを使った取引の研究を進めており、「システム上、機能することは確認できている」という。今後は参加する機関投資家や証券会社を募り、実務上の課題を精査することになっている。早ければ1年以内に、最初となる案件の発行を目指すこととしている。

将来的に、新サービスでは普通社債に加えて仕組み債や、企業や団体の発行するトークン(デジタル権利証)なども取り扱う方針である。自由な売買が可能なトークンについては5月末の法改正で、株式や社債と同じ「第一項有価証券」として規定される。また、それらを証券会社などの金融機関が取り扱うことになった。従って、トークンによる企業の新たな資金調達に対応することも検討されることとなる。

すでに海外では債券発行に分散型台帳を使った事例もある。昨年8月世界銀行は1.1億豪ドルの「ブロックチェーン世銀債」の発行をした。同様の手法で優先出資証券などを発行した例がある。日本取引所グループ(JPX)や証券会社が売買成立後に数量や価格を売り手と買い手で確認する「約定照合」というプロセスで、株式取引の分野ではブロックチェーンの活用を研究している。

 

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