アルプスアルパイン、フリービットと業務提携:デジタルキーに対してブロックチェーン活用を強化


まとめ
アルプスアルパインとフリービットは、ブロックチェーン技術の活用について包括的業務提携を結んだと発表した。安全なデジタルキーの共同開発、車両情報や走行データのセキュアな管理を実現するITインフラの構築などで協力する。フリービットはグループ会社を通じてスマートホームなどにもブロックチェーンを使ったデジタルキーを展開していく方針だ。

2019年7月23日、アルプスアルパインフリービットは、東京都内の会場で会見を開き、ブロックチェーン技術の活用について包括的業務提携を結んだことを公にした。デジタルキーの安全な共同開発、車両情報や走行データのセキュアな管理を実現するためのITインフラの構築などで協力する見込みである。

これにより、アルプスアルパインは車内だけでなくクルマに乗る前後もシームレスな体験を提供するコネクテッドサービスの事業化を進めていくことができる。フリービットは、ナビゲーションシステムや車内向けのエンターテインメント、自動車のカギなどをサービスとして提供することに尽力する。

7年前から両社の間では取引関係があり、CASE(コネクテッド化、自動運転、シェアリング、電動化)に対応して連携拡大が必要だと判断し、業務提携に至った。焦点を当てたコネクテッドサービス協業の例は2019年1月に発表したデジタルキーが最初に行ったものである。フリービットの株式10.1%を持っているアルプスアルパインではあるが、今回の包括的業務提携を受けた出資拡大は予定していない。

業界団体CCC(Car Connectivity Consortium)がデジタルキーの仕様策定を進めているが、その仕組みのうち、権限情報の追加や削除、修正をイーサリアムに置き換えることになっている。解錠や施錠といった車両に対するリクエストを署名つきで送信、クルマはクライアントの署名を検証し、権限所持者であることを認証してリクエストを実行するのだ。イーサリアムのウォレットアドレスや署名検証用公開鍵と紐付けて、クルマの持ち主や、オーナーから借りた人の権限は保存される。

フリービット 代表取締役会長の石田宏樹氏は「大切で高価なもの、例えばクルマや家などは物理的なカギとセットである。ただ不便なことと言えば、複数のカギを持つことや、盗難や紛失への備え、カギの貸し借りなどだ。これを便利にしながら守るための手段が、スマートフォンとブロックチェーンであるのではないか」と説明した。

クラウドやオンプレミスと比べて、ブロックチェーンを用いることで全システムコストが大幅に抑えられることを強調した。また、クルマが転売された後もデジタルキーのサービスを継続する上では、自動車メーカーがクラウドやオンプレミスを維持するよりもブロックチェーンを使う方が現実的であると述べた。

グループ会社を通じて、フリービットはスマートホームなどにもブロックチェーンを使ったデジタルキーを展開していく予定である。

ブロックチェーンを使った仮想通貨では情報漏洩が問題として挙がるが、この対策として、アルプスアルパインとフリービットはインターネットインフラログシステム「The Log」を採用することにしている。これは、サーバやインターネットといったオフチェーンのインフラシステムのログ情報を分散型のファイルシステムに格納することで、そのデータの参照に必要な鍵情報のみをブロックチェーンに連携させるというものだ。ブロックチェーンであれば改ざんの履歴が残るため、攻撃者はログを消去したり改ざんしたりすることで不正アクセスの形跡を消すことができなくなり、攻撃を防ぐことができる。

暗号モジュールに関する米国連邦情報処理規格FIPS(Federal Information Processing Standards)140-2のレベル3に準拠したハードウェアセキュリティモジュールにより、データの暗号化やブロックチェーンへの書き込みに必要な鍵情報が管理されることになる。

アルプスアルパインは、収集した走行データや事故の履歴などのデータ管理にThe Logを採用している。具体的には、Amazon Web Services(AWS)上のログとThe Logを連携させることで、車載端末が取得している位置情報を記録するというものである。

アルプスアルパイン 代表取締役副社長執行役員 統合シナジー担当兼アルパインカンパニー長の米谷信彦氏が、自動車のコネクテッド化による市場環境について「既存のハードウェアビジネスの必要性が下がっていく理由として、スマートフォン1つあればいいというビジネスが普及するがあげられる。“箱”さえあれば、中身はエッジ側ではなくクラウドにあってもいいという方向に変わりつつあるのだ。その中で、スマートフォンとクルマのエコシステムをどのように共存させるかが課題になるだろう」と語っている。

 

Previous 「ISOU PROJECT」における地域通貨:日本オラクル、流通基盤としてオラクルのブロックチェーン採用
Next 野村HD,野村総研がブロックチェーンで社債取引システムの実用化へ