ソフトウエア開発を主力とするIT企業アステリアが6月の定時株式総会にて実施された議決権投票にブロックチェーン技術を用いたことが話題になっている。
アステリアによると議決権を有する9,307人に対して、4議案10項目の投票において使用可能なデジタルトークンを配布。株主はデジタルトークンまたは紙の議決権行使書や従来方式のインターネットなどによる投票が可能にであった。
株主総会では、全体の20.07%に及ぶ有権者がブロックチェーンで投票したことが明らかになった。「全体の投票率が7割ほどなので、投票した人だけでみると、ブロックチェーンでの投票を選択した人がかなりいる。とても意味のある数字だと思っている」と平野洋一郎社長は語った。
管理者が必要なく、改ざんが不可能な非中央集権技術であるブロックチェーン技術は、さまざまな産業への応用が期待されている。しかしながら暗号資産を代表とした金融分野以外にはほとんど広がっていないのが現状である。
「当社は2015年12月に、上場企業として初めてブロックチェーン領域へ進出した。ブロックチェーンはまだ未知数な部分が多く、社会への普及にはかなりの時間と参加者が必要だが、率先して利用シーンを示そうと動く中で、株主総会での議決権投票に向いていると考えた」と、導入の理由を平野社長は語った。
平野社長は加えて、議決権の投開票は信託機関が管理するが、そのプロセスは外から見えにくいと言及した。経営陣や株主の間で対立があり、プロキシーファイト(委任状争奪戦)が発生したときなどは、すべてが自動かつリアルタイムで処理されるブロックチェーン技術の活用で、透明性や正確性を保証できるとの見識を示した。
これに加え、株の保有数によって付与される議決権の数が異なる場合、デジタルトークンだと発行が簡単で、なおかつブロックチェーンを活用すれば、サーバー構築の必要がない、よってシステム構築や運用のコストが大幅に削減可能だ。
アステリアは2015年12月にブロックチェーン領域への進出を発表した。これは同技術に関心を持つ投資家の間で話題になり、当時3,000人弱だった株主が、わずか2カ月で4倍以上の1万2,000人台に増え、株価も8倍に上昇した。現在は株主の9割超を個人株主が占めているという。
「ブロックチェーン銘柄」を理由に保有している個人株主が多いことも背景にあり、同社は2017、2018年に、ブロックチェーン技術を使った議決権の模擬投票を行った。その時は株主以外も参加でき、実際の投票には反映されない実験にとどまっていたが、今年は株主名簿を管理する三菱UFJ信託銀行の協力を受けて、株主総会の本番に導入した。