ブロックチェーン関連企業が集積する「クリプトバレー」、スイス・ツーク市


まとめ
「クリプトバレー」という言葉をご存知だろうか。「クリプトバレー」は暗号資産に代表されるブロックチェーン関連の企業や組織が集積する場所が欧州にある。スイス及びリヒテンシュタイン公国に広がる。2018年12月の時点で750社のブロックチェーン関連企業が集まり、世界に向けた最新技術の源泉となっている。税制優遇が人気となり、こぞって世界中のプロジェクトがここに集まって日々、競い合っているのだ。

暗号資産(クリプトカレンシー)をはじめブロックチェーン関連の企業や組織が集積する、「クリプトバレー」と呼ばれる場所がスイス・ツーク市周辺に存在する。その他、「ビットコイン」と並ぶ暗号通貨である「イーサリアム」の推進団体などが同地に本拠地を置く。この場所では、米テックジャイアントが情報を独占しデジタル経済を支配する現状を変え、個人情報を重視する新しいインターネットの世界「ウェブ3.0」の構築を目指す。

ツーク湖のほとりにある人口3万人の小さな都市ツークを中心に、「クリプトバレー」はスイス及びリヒテンシュタイン公国に広がる。スイスの金融センター、チューリッヒから南に約30kmだ。2018年12月の時点で750社のブロックチェーン関連企業が集まり、3,300人の雇用を生み出している。18年9月時点に比べると、暗号資産の価値が暴落した「クリプトの冬」を経て企業価値は半分以下の2,200億ドル(約2兆円)となったが、企業数は20%増えている。企業データベースの米クランチベースを調べると、ブロックチェーン関連企業は世界で約4千社あるが、その2割がこの場所に拠点を持つ。

ベンチャーキャピタルのCVVCによれば評価額10億ドルを超える組織、企業(ユニコーン)は4社ある。そのうち、暗号資産のプラットフォーム(実装基盤)を提供しているイーサリアム財団、同カルダノ財団、ブロックチェーンを使ってクラウドサービスを実現しようとしているディフィニティーは、ツーク市に本社を置いている。4社目は、比特大陸科技、北京市に拠点を置く、中国企業で暗号通貨採掘大手のビットメイン。暗号資産を預かる金庫サービス、ザポ(Xapo、香港)は、暗号を開ける秘密鍵をスイスに保管し、グローバル事業の本社としてツークを選んだ。

ツーク州が古くからタックスヘイブン(租税回避地)となっているため、ツークにブロックチェーン関連企業が集まった。持ち株会社への課税はキャピタルゲイン(売却益)税のみ、所得税を払う必要がないとする「持ち株特権」制度が第一次世界大戦後の1921年に導入された。売上高の80%以上を海外で稼いでいる場合はさらに税金が少なくなるという。スイス平均の法人所得税は18年は17.71%。中でもツーク州は14.51%と国内で6番目に低い。07年の時点では平均が20.76%でツーク州が16.10%と差はさらに大きかった。個人所得税も18年は22.86%のジュネーブや40%台のチューリッヒと比べると半分に近い。

また、スイスの金融監督当局、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)もブロックチェーンについては寛容であったため、イーサリアム財団が14年に暗号通貨による資金調達(ICO)をスイスで最初に実施する背景となった。ツーク市は16年にビットコインによる地方税の納入を解禁したり、18年にはブロックチェーンを使った住民投票実験をするなど新技術の応用に積極的である。行政の積極的な姿勢も、世界中のブロックチェーン企業を呼び込む吸引力となっている。

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