「ビットコインのブロックチェーン」ではない ブロックチェーンの定義、由来と変化


まとめ
「ブロックチェーンに興味がある。ビットコインではない」というフレーズは、これまでに何回も世界の大企業のトップが口にしてきた言葉の一つだ。しかし、「ブロックチェーン」はもともとその言葉自体ビットコインのホワイトペーパーには一切記載されておらず、実はユーザーによる造語であったのだ。

元ビットコイン開発者のマイク・ハーン(Mike Hearn)氏は、「ブロックチェーンという言葉は、初期にはまったく使われていなかった」とCoinDeskで述べている。しかし、ハーン氏は、ビットコインの生みの親であるサトシが、フォーラムでの議論でビットコインの「プルーフ・オブ・ワークチェイン(proof-of-work chain:意思決定の仕組み)」に言及していたことを認めた。

サトシが2010年7月に始めたビットコインをテーマにしたフォーラムBitcoin Talkにおいて、ビットコインがリリースされてから1年以上が経過した頃に初めて「ブロックチェーン」という言葉が登場した。

当時、この言葉はテクノロジーの革新性を示すものではなく、ビットコインの「ブロックチェーン(ビットコインの取り引きの全履歴)」のダウンロードにかかる時間の長さに不満を表すものだった。あるBitcoin Talkのユーザーは、「初期のブロックチェーンのダウンロードはかなり遅かった」と述べ、ダウンロードはその後かなり速くなったという。

したがって、当初、ブロックチェーンは今のような魅力的な言葉ではなかった。ブロックチェーンという言葉がいつ定着したのかを正確に特定することは難しいが、この言葉への関心は、ドラッグや闇経済で使われる通貨というビットコインの負のイメージを理由に、ビットコインに関わることを迷っていたプロフェショナルな組織や個人から出てきたといえる。

ハーン氏は、「人々がワシントンDCに行き始め、基盤となるアルゴリズムから切り離すことでビットコインの価値を高めようとした頃に人気が出てきたと思われる」と述べた。

多くの人にとって、通貨としてのビットコインとブロックチェーン・プロトコルとしてのビットコインは別のものとなり、暗号資産とは無関係な、「プライベート・ブロックチェーン」という全く新しい産業が生まれた。実際、2015年頃、グーグル検索によると、ブロックチェーンという言葉は急上昇している。

ハーバー氏は、あるインドの寓話を例にあげた。寓話では、目の見えない人たちのグループがはじめて象に触れ、それが何かを確かめようとする。象のどの部分に触れたかによって、答えは変わる。例えば、ある人は象の鼻に触れて、蛇だと思う。一方、他の人は象の脚に触れ、木の幹だと言う。ブロックチェーンの定義もそれと似ているとハーバー氏は述べる。

同氏はCoinDeskに次のように語っている。「ある定義はまったく馬鹿げていて、人々は自分が行っていることを理解していないことを示している。しかし、ブロックチェーンの膨大な取り組みのさまざまな部分についての正確な記述もたくさんあるだろう。」このように、同氏によると定義は一つだけではない。

ビットコインに関わる人たちは、ブロックチェーンとは暗号資産のブロックチェーンでしかないと信じている。しかし、言葉のように定義は常に進化し、変化している。

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