経産省が語るブロックチェーン技術の「教育・研究」への適用と課題


まとめ
経済産業省でも日本国内にブロックチェーンを浸透させるにはどうする必要があるのか国内外問わない業界関係者による情報収集やハッカソン開催など積極的な動きを見せている。「ブロックチェーン×教育・研究」でレベルの底上げをはかり、よりネットワークを強固にする必要がある。

経済産業省は2019年4月23日「ブロックチェーン×教育・研究」分野で調査事業に関する報告書を発表した。

この調査事業をリードした担当者はブロックチェーン技術について「未だに死の谷を越えていない」と語った。

では、”死の谷”を超える方法、そして社会実装に置ける今後の課題とは何か?

ハッカソンで明らかになった技術の実用性

経済産業省は調査事業の一環として、2019年2月に「研究データの信頼性確保」「学位・履修履歴管理」をテーマにした「ブロックチェーンハッカソン2019」を実施。政府の調査事業としてハッカソンを開催することは、極めて異例だ。

ブロックチェーンハッカソン2019」は2019年2月9日及び16日-17日の3日間で開催され、募集人数の70名をはるかに超える142名が応募。最終的に98名の参加者が集まった。

ハッカソンを担当した冨田直樹氏は「正直、こんなにも参加者が集まるとは思ってもみなかった。我々も初めての取り組みで、当初は集まらなかったらどうしようかと話していたが、アウトプットのレベルも高かった」とイベントが有意義なものになったことを振り返った。

ハッカソンでは、「研究データの信頼性確保」と「学位・履修履歴管理」の2つのテーマのうち、チームごとにどちらかを選んでアイデアを出し合った。22チーム中第1次審査を通過した12チームが最終審査に進み、プレゼンを行った。プレゼンだけでなく、ブロックチェーンを実装した画面を披露するチームも多数見受けられた。

最終審査の結果、「研究データの信頼性確保」の部門では、臨床試験における解析工程のアウトソースプラットフォームを考案したチームが最優秀賞を受賞。「学位・履修履歴管理」部門では、ERC725V2 、ERC735を利用して、公開鍵がアイデンティティとなるような世界を目指したプラットフォームが評価され、学位や在学期間のポートフォリオを一元管理するシステムを考案したチームが最優秀賞を受賞した。

徳弘氏は「ハッカソンで各チームから提案されたアウトプットは、どれもハイレベルで、純粋に驚いた。ブロックチェーンの活用については、デザインも含めて、すぐに何らかのモノにできるレベルにまで達していることは証明されたと思う」と感想を述べた。

本当にブロックチェーン技術はコストに見合うのか?

ハッカソンを通して、ブロックチェーン技術の可能性だけでなく、適用に際しての課題も見えた。経産省は今回発表した事業報告書の中で、課題を三つにまとめている。

  • 1. 技術面

    ・秘密鍵の安全な管理・利用の方法

    ・そもそもデータを入力する際の信頼性の確保方法等

  • 2. 経済面

    ・高いUXの実現

    ・ブロックチェーン技術利用の必然性

    ・マネタイズモデル等

  • 3. 制度面

    ・プライバシーの保護

    ・知る権利や忘れられる権利の整合性等

「ハッカソンを通してブロックチェーンの可能性を感じつつも、実際に適用していくためには制度面のハードルや、受け入れ側の運用体制など課題点も多いことがわかった。ここが解決されない限り、社会実装はむずかしいだろう」と徳弘氏はこれらの課題について語った。

しかし、徳弘氏は「ブロックチェーン技術を適用してとりあえずモノを作ることはある程度は出来ており、この取り組みと並行してどうすれば社会実装に向けて適用できるのかを考える段階に来ている」と語り、ハッカソンのプレゼン結果などを通しブロックチェーンの活用については、いつでも形にできるとの手応えを感じている意志を明らかにした。

続けて徳弘氏は「たとえば学位証明の場合、(非中央集権型の)ブロックチェーンで管理するよりも、(中央集権型の)学位管理機構を作って、そこにデータを預ける方がコストに見合う可能性もある。今回のハッカソンではコスト面の比較ができていない。実際の適用を考える際には、マネタイズも含めて検討していかなければならない」と語り、ブロックチェーン技術を用いなくても低コストで、信頼性・改ざん不可な環境が担保できればいいとの考えだ。

「死の谷を越えていくためには、ネットワークが力になる」

経済産業省は今後の取り組みとして、ブロックチェーン技術におけるネットワークの拡大を重視している。

“ブロックチェーン技術を実世界で実装してみたい” “今回のテーマに興味があった”という二つの応募動機でハッカソンに参加した人が75%以上だった。

徳弘氏は「死の谷を越えていくためには、ネットワークが力になると考えている。経済産業省が旗振り役をしながら、学生などがブロックチェーンで作ったものを適用し、実装に向けた動きや課題解決につながる取り組みを行っていきたい」と今後の抱負を話した。また、冨田氏は「大企業のエンジニアが個人で参加するなど、心意気で参加してくれた人が多かった。そうした人とつながれたことが大きい」と今回の手応えを語った。

ブロックチェーンの教育利用は、国外でより活発化している。一方で、 死の谷を未だ越えていないと言われているブロックチェーンではあるが、日本にもブロックチェーンに可能性を感じている人が多くいる。日本は今、ようやく社会実装に向けた課題が見えた段階だで、他国から遅れている。世界の動きについていくためには、開発や、適用にさらなるスピードが求められる。経産省の強いリーダーシップに今後も注目していきたい。

 

上記3枚写真こちらより引用。

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